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休憩モード

休憩中に書きました。

東日本大震災アーカイブシンポジウム 地域の記録としての震災アーカイブ〜未来へ伝えるために〜

参加した

2016年1月11日に開催されたシンポジウムに参加したのでメモ。 私は過去2回登壇させてもらったことがあるシンポジウム。継続して開催されており,一年の動きみたいなところもわかる。 例によって,以下のメモは私が聞き取れた,理解できたところでのもので,公式記録ではないので,その辺はご留意を。

東日本大震災アーカイブシンポジウム 地域の記録としての震災アーカイブ〜未来へ伝えるために〜(2016年1月11日) « みちのく震録伝 震災アーカイブ

開会のあいさつ(今村)

  • アーカイブは,311をどのように後世に残すのかという課題がある。震災直後の被害の菅ら,地震津波過去の災害経験,福島の原発事故も含まれ,経験のない災害,複合災害になってしまった。繰り返さないために,記録を残すことが大事。
  • このシンポジウムは今回で5回目。1月11日の月命日に合わせて開催した。神戸大学の附属図書館や中越取り組みが先例としてあり,当時は,手探りであった。これだけ大きな災害をだれがどのようにアーカイブするか。が大きな話題であった。ニュージーランドのポールミラー,ハーバード大学のゴードン先生などを迎えた。
  • 今回は,10年を経たアチェ博物館からハサン先生を迎えた。忘却とどのように向き合うのか,伝承するのか,ということについて語っていただきたいと思っている。
  • アーカイブ,記録することは重要であることはだれでも認めるが,継続することは難しい。一歩でも,復興途中ではあるが,記録して残せればと。
  • シンポジウムで様々な情報収集をいただき,コメントいただければと思う。

特別講演「博物館における教育・研究活動と災害アーカイブの統合-アチェ津波博物館におけるアチェ津波デジタルアーカイブ(DATA)-」トミー・ムリア・ハサン(アチェ津波博物館長)

  • ハサン氏の経歴1979年生,2015年から津波博物館の館長。それまでは,復興庁にていくつかのプロジェクトにかかわっていた。津波被害の経験,軽減を若い人に伝えたい,という思いで引き受けた。
  • 津波災害の様子を写真等で説明
  • 2005年4月,アチェ津波復興庁(復旧・復興にかかわるすべての事業を取り扱う。BRR)設置。これは4年の時限。54億ドルの支援が国際社会から寄せられた。
  • 優秀な人材を集めたかったが,すでにアチェで活動していた人材は,BRRの給与水準以上であり,人材収集のために,大臣条例により給与を担保した。BRRは仮設テントに住んでいる人をよりよい住居へ移動させること。公式には2009年にBRRを解散し,復旧が終わった。未完の事業は,州政府等に引き継がれた。
  • 多くの記憶,教訓,経験が残された。問題は,人間は過去について忘れやすい。こうした記憶をどのように保存していくのか。BRRの長官であったクントロ氏は,復旧復興が進むにつれ,津波の痕跡が消えていくことに危機感をもっており,津波博物館の設置を構想し,2011年に開館した。
    • アチェ津波博物館の機能
    • 災害情報,防災と教育のための拠点
    • レクリエーション目的
    • 避難エリア
  • 博物館はほかの機関との協力がないと成り立たない。大学や研究機関の研究を社会に広めていく。そういった機能を強化していきたい。博物館の所蔵物は館内にだけあるのではない。発電船は漂着した場所にとどめ置かれ,博物館として内部を公開している。
  • デジタルアーカイブ(DATA ダタ プロジェクト)
    • 博物館ですべてのデータを入手できていない。復旧・復興庁のデータは国立アーカイブズに引き継がれたが,十分な整理ができていない。このため,津波博物館のデジタルアーカイブ構築により,加速化をもくろんでいる。共同して進めていくことにより,一つの場所で見ることが可能になる。 - 時系列的なデータ構造
      • 津波以前(-2004)
      • 発災時2004.12.26
      • 緊急支援時(-2005.3)
      • 復旧復興期(2005.4-2009.4)
      • 平常時(2009.4-)
    • DATAプロジェクト
      • ストレージ
      • 場所(研究,学習の場)
      • 共有(活用の発表)
    • デジタルアーカイブにアクセス可能で,広く共有可能であることが重要である。

事例報告(1)「青森震災アーカイブについて」漆戸啓二(八戸市防災危機管理課主事)

  • 2011年4月防災危機管理課に配属。課内で唯一震災を経験。
  • 青森震災アーカイブの沿革。アーカイブ実証調査をきっかけ。実証調査で収集したデータを青森震災アーカイブに移管。
  • 文書データにおけるマスキングポリシー。公文書として扱う範囲。行政文書の取り扱いを一時的に非公開にして議論している。マスキングのせいでほとんど真黒な文書データがある。

事例報告(2)「東日本大震災アーカイブ宮城について」菊地正(宮城県図書館副館長)

  • 震災時は,宮城県危機対策課長。職員一同全力で取り組んでいた。あの時あれでよかったのか,という自問自答がいまだに消えていない。震災アーカイブについては,4月からきてかかわっているが,思い入れがある。
  • トップページの上3枚は閲覧回数の多い順に自動更新。下は検索インターフェース。
  • 県と県内市町村が連携協力している。約41万件のうち権利処理が終わった31万件を公開している。県がまとめて権利処理を行っている(一部を除く)。市町村があらためて権利処理を行う必要がなく,閲覧者が使う際に基本的にはあらためて許諾をとる必要がない状況としている。
  • 県内全域のデータであるからこそ,ライフライン,避難所,食料といった分野ごとの整理活用により災害対策への価値は高い。
  • 利用する側の目線でのパッケージ化(まとめ)を提供する。
  • 東日本大震災文庫という収集資料との組み合わせをどうしていくか。継続的な記録も重要。=つくっただけでは意味がない。

事例報告(3)「浦安震災アーカイブについて」白沢靖知(浦安市中央図書館奉仕第2係長)

  • 事業繰り越し(3月に明繰),平成27年6月末まで。27年7月から公開。
  • マスキングを外してほしい,という問い合わせがあり。
  • コンテンツの修正登録ができる職員を育成する必要がある。
  • アーカイブを知っている市民が全体の3割。行政広聴「Uモニ」を活用した。

進捗報告(1)「岩手県における震災アーカイブの現状」柴山明寛(東北大学災害科学国際研究所准教授)

  • 岩手県の取組みについての途中経過報告
  • 権利処理などの論点整理も。
  • 3月にガイドライン策定・発表予定。

進捗報告(2)「ポータル(入口)としての国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」」- ひなぎくの運用状況報告。

進捗報告(3)「社会の減災を指向する災害アーカイブと災害伝承-『みちのく震録伝』と震災発生から5年目の災害科学的アプローチ-」佐藤翔輔(東北大学災害科学国際研究所助教

  • 東日本大震災の教訓とはなにかを知りたい→災害科学に基づいて作成したDB 311からの学びDB=キュレーション
  • 震災教訓データベース→論文から結論部分を機械的に抽出
  • 伝承=残すこと,伝えることで減災できているのか(津波伝承知メディア)

パネルディスカッション

  • 柴山)5年目,アーカイブはずっと行われてきた。地域の記録として,今後どういう風にアーカイブを進めていって利活用を進めていくか。発展させていくか。地域にどのあたりが重要なのか。

    • 漆戸)リリースから2年。いま集めているのは,被災の状況,被災直後の写真などがメイン。記録誌と変わらないということになる。自治体だけではなく,企業も含めて,復興の状況を集めていく,というのが自分が考える未来である。いろんなところが持っている資料をたくさん集める。

      • 柴山)どれくらいの資料数目標あるか?
        • 漆戸)どれくらいあるのか,というのがそもそもわからない。すべてあればいいなと思っている。
    • 菊地)教訓のまとめについて,大学の先生方であるが,宮城アーカイブから抜き出されて,教訓ができるといいなと思っている。全文検索ができるわけではないため,本当はそういうのもあるといいのだが…。解析してみたい。

      • 佐藤)解析自体は,すべて論文となっているものを行っている。
      • 柴山)簡単に教訓に落とし込めるわけではないし,論文も書くのに時間がかかる。なるべく研究者としては急ぎで提供したい。
    • 白沢)市民,民間で持っている資料も収集しないといけない。素材が集まったのでこれからそれを料理し,公開していく。
      • 柴山)宮城県では早くにアーカイブの取り組みがあり,教育プログラムもたくさんある。
    • NDL)資料をため込んできて,どう使うかという働きかけは弱い。こんなところにある,という利用者が探してくれる。震災資料については,デジタルアーカイブを漫然と公開しているだけで使われるものではない。学校への働きかけなど教育という部分は図書館なので,なじみやすく,いかに使っていくかを考えていきたい。また,特徴的な取り組みとしてWebアーカイブもされている。
      • 柴山)Webアーカイブを授業で使っている。過去に戻るのができない。
    • 佐藤)情報のライフサイクルがある。情報収集の前に情報要求がある。それを明らかにしていきたい。
      • 柴山)地域の要求は様々である。いろんな人に聞くしかないかと考えている。
  • フロアから)教訓の掘り下げ。ツールをつくるか,運用でカバーするか,簡単な区別ができるといいのだが。

    • 佐藤)スケールの問題と思っている。
    • 菊地)難しいだろう。一つの物事を右か左かで見方が違ってくる。簡単には決めていけないだろう。ツールがあればいいかもしれないし,そこまでいかなくてもいいだろう,ということもある。 - 青森)大きい,小さいの災害の線引きはしにくい。大小にかかわらず被害状況は記録されているので,公開することは可能だろう。自治体としては,そういった要求があれば対応できるという体系としておくのが重要であろう。
  • 柴山)震災アーカイブの方向性について,一言いただきたい。筑波大学の杉本先生と首都大学の渡邊先生にコメントをお願いしたい。

    • 杉本)デジタルアーカイブは使ってもらいにくいもの,といえる。NDLがずっとやっている。集める側の視点で作られている。震災アーカイブを見ていると本来あったコミュニティで作られたアーカイブがある。つないでいきたいという意思を感じる。いろんな使い方をしてもらいたい。使い方としては,防災教育,専門家の研究,地域としての記録を記憶に置き換えることがなされていくべきであろう。写真をみて,いろんな人が思うことは異なるはず,コミュニティとしての記憶を作っていく,保っていく,伝えていく,ということ。言うは易く行うは難しである。地域に根差したポジションで,図書館や公民館などで,進めていけないだろうか。使う側としてもコミットしていく場が必要。
      • 柴山)循環するアーカイブ。コミュニティを作るという感じか。
    • 渡邊@広島アーカイブ)広島でワークショップを開いてうまくいったのだが,どんな風に平和学習に使えるのか,ということを高校生にやってもらった。情報デザインとして,デザイン指向(消費者がどんなものを求めているかからデザインを指向する)があげられる。教材作成のなかで。若者が何を学びたいか,というベースから始めるといいのではないか。副次的な効果として,若者が生き生きしていると,上の世代は元気でいられる。まちの活性化につながる。
      • 柴山)きっかけづくり,というのが重要か。東日本でも試みているが,PTSDもあり,難しさもある。震災を知らない若者も増えていることは間違いない。
      • フロアから(政治学,東北大に2013年まで在籍されていた先生):記録誌だけではなく,復興の形を集めておくことが大事。過去の震災を見ていると震災時と復興時に記録誌ができる。震災誌と復興誌に対応。記録誌において,震災誌はあるが,復興誌はどのように作られるのだろうか。 教訓を一言で整理するのが重要だろう。ろんなものがあるが,「これはなんだろう」と思う。デジタルアーカイブは,書かれたものと異なり,どのようなものであるか,という見取り図があるといいと思う。データベースを作っている歴史を少しずつ紡いでいくことが必要なのではないか。5年の段階でオーラルヒストリーを取っておく必要があるか。しゃべっておくだけでもいいのではないか。デジタルアーカイブのでき方がストーリーとして見えてくるかもしれない。
    • 佐々木@神戸大学阪神淡路大震災から5年の時。人防の資料の基礎となった資料の調査収集事業を行っていた。5年でそれほど出るのか,ということだったがたくさんあった。ボランティア元年ということもあり,ボランティア団体の資料がたくさんあるはずだし,活動を継続をしているから報告を出せない,という話もあった。大事であるから,活動収集終了にあたって資料をほしいと言っておいたこともある。長期にわたって資料が出てくる。集めている。長いスパンで,ある意味,全体を知りたい,全体を残すにはどうしたらいいかという意気込みが必要だろう。
    • 森本@ハーバード大学)地域のアーカイブの在り方について。アーカイブを持っていて,データを提供できるという可能性。東北のこの地域を知ってもらえるチャンスがある。デジタルアーカイブの使い方というクラスで,初めてデジタルアーカイブを使っているなかで,地域に興味を持ってきた。権利などの問題はあるのを承知しているが,国際目線としてはそういう可能性もある,ということを示している。
  • 柴山)最後に一言ずついただきたい。
    • 漆戸)自分の次の担当にしっかりと気持ちを伝えることが必要。役所全体で育てていきたい。 - 菊地)自分たちで自分たちのアーカイブにタガをはめない。使ってもらう工夫が必要だろう。宮城県の中だけで考えない。日本の中だけで考えない。子供たちに自由な発想で考えてもらう。クリエイティブな発想で。
    • 白沢)公開したばっかり。市民だけではなく,いろいろな人たちに活用していただき,役に立つシステムでありたい。
    • 諏訪)ひなぎく公開から3年。NDLの使命と目標のなかの一つが,震災アーカイブ。なにができて,なにができていないのか,というところを検証したいと考えている。次のステップへの布石。
    • 佐藤)減災・災害科学ということでは,アーカイブを途切れないものにする,ということは大きな課題であると考えている。
    • 柴山)データを公開するのには,権利処理が必要である。提供する側の権利をまもりつつ,利活用しやすいようにする。権利処理を議論しながら,詰めていきたい。

所感

  • アーカイブの構築時の課題。構築はある種の構造化であり,世界観の構築につながる。メタデータの普遍性は一定の限界があり,それは利活用の幅と密接な関係がある。どのような利活用にとっても,有用なメタデータはつけようがない。ベーシックなメタデータのありよう,というのがもう少し見えてほしいと思う。
  • 利活用という用語が共有される実態はどこなのか。利活用という言葉がさす部分が,使う人それぞれに違っているような気がしてならない。これらの概念をすり合わせて話をしないと,抽象的な部分で一致しているようで,具体的な部分で不一致する可能性が高い。
  • コストについても触れてほしかった。人的コスト,金銭的コスト。震災関係のアーカイブにかかるコストはだれが負担すべきなのか,ということをはっきり打ち出すべきではないだろうか。